日本ろう自転車競技協会
Japan Deaf Cycling Association JDCA
スペシャルインタビュー
第23回夏季デフリンピック競技大会
自転車競技日本代表チーム 小笠原崇裕監督に聞く!
聞き手/日本ろう自転車競技協会の監督を受けてから今年で4年目になりますが振り返ってどうですか?


監督/最初、選手たちを見たときはレベルのばらつきが大きかったです。基本や練習に対する気持ちも本当にばらばらでした。最初はちょっと心配でしたが、少しずつ合宿やレースなど積み重ねていくうちに自転車競技選手らしい気持ちを持つようになっていきました。レースに挑む気持ちが、この3年間で普段の練習に対する考え方を変えていったのではと思います。


聞き手/そうですか!デフ選手の監督を受けた当初と、3年間行動を共にした今では監督自身が変わったことはありますか?


監督/やはり依頼された当初はどうやって伝えたらいいか、どこまでやれるか、例えばニュアンスを伝える方法などを考えました。自転車競技では擬音を使って説明することが多いので、それをどうやって伝えたらよいのか、ちゃんと伝わるかどうか分かりませんでした。だからこそ僕にとってもチャレンジだと思いました。でも意外とデフ選手の皆は本やインターネットで自転車について勉強しています。だから聞こえる聞こえない関係なく今までと同じ方法で伝えれば分かってくれます。デフ選手の皆も僕が言うことをきちんと咀嚼して理解してくれます。だから僕も助かりますし、教えるのもスムーズにいきます。僕自身がなにか変わったという感じはしませんね。


聞き手/なるほどです。


監督/合宿やレースで何度も会っているので、お互いに言いたいことがつかめるようになり、以前に比べて通じ合えるようになったし、今はさらにもっとスムーズに正確に伝えあっていると思います。


聞き手/以前はデフ選手は大会やレースに出ることがなかなかなかったし、運営側もデフ選手を受け入れる方法が分からないというのがありました。最近はそういう面が変わってきているように思いますがどうですか?


監督/本当にそうですね!さまざまなイベントやレースに行くと本当に変わっていることを実感します。みんなが赤いジャージを着て参加しているので、周りの人に見てもらえています。大会運営側や他の選手たちも赤いジャージを見て、聞こえない人がいるということが分かります。単純に「デフ選手がいるから我々も注意しよう」というだけではないです。参加している皆にとってもデフ選手が頑張っていることに勇気をもらっていると聞きます。だからお互いに高め合い、励まし合うことによって自転車競技の発展につながっています。デフ選手の認知度が高まっていき、応援してくれる人も増えていると感じます。

聞き手/ロードレース中、聞こえないから不利な面、また聞こえないからできるというような有利な面はありますか?


監督/不利な面というと、後ろでギアチェンジする音が聞こえないことですね。ギアチェンジの音でアタックがあることを察することがデフ選手には難しいです。それで一瞬遅れてしまう。1~2秒は遅れてしまいます。このように反応に遅れるという面では不利かもしれません。 有利な面では、レース中、ライバル選手の息遣いの音でラクなのか苦しいのか判断する事があるのですが、自分は苦しいのにライバル選手はラクに走っているのが分かるとメンタル面で影響が出ますね。またレース中に「ペース上げろ」、「ペース下げろ」などなどいろいろ指示をしてくる選手も多い。そういった音の部分が聞こえないから関係ないし影響も出ない。そういう点がとてもよいですね。若手選手はベテラン選手からいっぱい言われて心が折れることが多いらしいですよ。


聞き手/そうなんですか??


監督/はい。きつく言われて委縮しちゃって、集団から落ちていって負けてしまう人もいますね。


聞き手/デフ選手の場合は純粋に実力勝負ですね。


監督/そうですね!


聞き手/ではマウンテンバイクレースの場合はいかがでしょうか?


監督/マウンテンバイクレースの場合は、聞こえなくて有利という面はあまりないような気がしますね。ただ、ちょっとマイナス面では、後ろから選手が来ることが分からない。後ろから来た選手が「デフ選手邪魔だな」と思うかもしれない。でもデフ選手が出ているということは赤いジャージを見てわかってもらえるので、赤いジャージの選手がいればうまく避けて下さい、と自分からアピールする必要がありますね。


聞き手/そうですね、自分からもアピールしないといけませんね。


監督/ですので、デフ選手が脇に避けてルートを譲るということができなくてもうまく抜かして下さい、と周りに言っていくのがいいと思います。僕もいろんなマウンテンレースに出ていますが、赤ジャージを着ているデフ選手が邪魔だったというような話は聞かないので問題はないと思っています。


聞き手/強くなればいいんですよね。


監督/そうそう!先頭に立ってどんどん引き離していけばいいのです!


聞き手/(笑)

聞き手/さてデフリンピックまでもうすぐです。監督にとってデフリンピックにかける想いはいかがでしょうか?


監督/僕は初めてデフリンピックに参加します。大会がどんなものなのか、規模はどうなのか、行ってみて初めて分かると思います。今はまだ分からないです。でもオリンピックと同等なものと思っています。オリンピック並みの大きな大会ですよね。そこで日本選手が活躍してほしい。特に僕が監督をしている自転車競技ナショナルチームに活躍してもらいたい。メダルを獲る、いや 必ず獲らなければならないと思っています。


聞き手/わ~~お。


監督/ですよ。だからいつも厳しいことを言っている。合宿や練習のときは厳しく言っています。でもこれは応援しているからで、頑張ってもらいたいからだと受け止めてもらいたい。選手にとってはうるさい、分かっていると思っているかもしれない。でもメダルを獲るためには必要なことだと思っています。本当はもっと強く言う必要があるくらいです。


聞き手/うんうん、そうですね!


監督/うるさいくらい厳しく練習しなさいと言わないといけないくらいの価値ある大会だと思っています。選手たちも日常生活の中で犠牲にしていることが多い。(デフリンピックに)かける心を持っている。デフリンピックまであと2ヶ月。それまでの過ごし方でメダルが獲れるかどうか、順位が変わる場合もある。レースが終わるまで気を引き締めて、僕も皆とともに注意して過ごしていきたいと思います。


聞き手/デフリンピック日本代表選手一人ひとりについて監督からどんな選手か、またデフリンピックに向けて期待する部分をお伺いしたいです。

まずロード競技の早瀨憲太郎選手は?


監督/(早瀨)憲太郎選手には以前からもっと柔らかい走りをするようにと言ってきました。力む必要はない、とずっと教えてきました。そして今年に入ってから本当に柔らかい走りに変わってきました。力を入れ過ぎたペダリングではなく、軽快にペダルをこいで前へ進む感覚がつかめてきていると思います。その感覚があればスピードの上げ下げが強くできます。タイムトライアルみたいな走り方にも対応できます。いままでみたいにとにかく力だけで走っていると、デフリンピックはレースが続くステージレースに近いので疲れが早く出ます。柔らかい走りだと疲れが残りにくくなり、体調の良い状態のままで4種目をこなしていけると思います。ですので、この先体調を上げて負荷をかけた練習のときも、今のように大きな力を使わないでスピードを出していくイメージをもつと良いと思います。頑張りたいという気持ちがどうしても練習に出てしまうところがあります。スピードを出したいと思ったら一度息を吐いて力を抜いてリラックスする。そうすることでいい走りにつながります。それがデフリンピックでもそのまま生かせれば、メダルも獲れると思います。メダルは1つだけではなく、2つ、3つ・・・ 獲ってもらいたいですね。


聞き手/わ~!

ではロード競技の川野健太選手についてお願いします。


監督/川野選手は昨日のロード練習会に参加していましたが、以前と比べると上りが上達していました。長い上りはまだまだですが、アップダウンはきちんとペースを維持できるようになっています。以前はペースを落とす必要がありましたが、平坦、下りの負荷は同じで、そのまま上りに入っていけるようになっており、ベースアップができているのが分かります。本人も体幹トレーニングを多くやっています。その効果が出てベースアップにつながっていると思います。デフリンピックのときは(早瀨)憲太郎選手のいいアシストができると思います。また自分からもタイミングを見て積極的に動く力はある。だから自分がどう戦っていくか、その心の持ち方が大切になるかなと思います。本当はもっと戦う気持ちをもって、練習のときも自分からアタックを仕掛ける、ペースを上げるなど積極性があると良いなと思います。チーム皆で川野選手の気持ちを盛り上げていって、最終的にそれがDeafJAPANチーム全体の活性化につながればいいですね。


聞き手/続いてロード競技の簑原由加利選手については?


監督/簑原選手は、持久力、粘り強さが着実に上がっていると思います。先日の愛知県での強化合宿のときも、一度集団から千切れても集団のペースが落ちたときに自力で追いついて、それからずっと集団についていく力がついてきていました。だから持久力は身についています。あきらめないという心も強くなっていると思います。デフリンピックのレースのとき、例えば風が強いとか暑いなど状況が厳しいときでも期待できると思います。いまのままあと2ヶ月間良い状況、良いイメージを保って挑んでほしいと思います。


聞き手/ではマウンテンの箭内秀平選手。


監督/今年は公式戦のCJシリーズのエリートクラスで完走をしている。少しずつレベルアップしているところだと思います。箭内選手の走りを見ると、テクニックは十分にあります。もしデフリンピックでテクニックが必要なコースだったらかなり期待できると思います。ただパワーが足りない部分はあります。デフリンピックまでの2ヶ月でパワーを上げてもらえれば、メダルも期待できるかなと思います。


聞き手/マウンテンとロード兼任の早瀨久美選手は?


監督/久美さんはマウンテンとロードを兼任しています。どっちもバランスよく走れていると思います。マウンテンのほうは怪我のためお休みしていましたが、今日のマウンテン練習を見てみると、休んでいたとは思えないほどスムーズに走れています。普段のロード練習のときに、体力アップ、またスピードアップの両方とも練習していけば、マウンテンもロードも前回ブルガリアデフリンピックでのメダル以上の色が期待できるんじゃないかと思っています。マウンテンではメダル、もちろんロードでも皆とともにメダルを狙っていくことをお願いしたい。

聞き手/デフリンピックナショナルチームを応援して下さるみなさんへのメッセージをお願いします。


監督/自転車競技というのは、やはり音で判断して動く選手が多い。後ろの選手の息遣いを聞いたり、ペダリングやギアの音が変などが分かる。でもデフ選手はそれが分からないですよね。分からない世界にいて、それを超えて自転車競技をやっている。僕は30年自転車競技をやっているが,そういう音が聞こえないというのは本当に怖さを感じます。実際僕自身も音を聞いて判断して走ってきました。だからこそ聞こえないというのが怖い。聞こえないのに走るって本当にすごいなって思う。とにかくすごい、本当にすごい。デフ選手は普段の練習も本当に頑張っていて、また聞こえなくて不便なこともあると思う。そういう選手たちを応援してくれて本当にありがたいと思います。これからも大きな応援をお願いしたいと思います。


聞き手/最後に久美選手が自転車競技の選手として

デフリンピック日本選手団の主将に選ばれましたね。


監督/単純に、自転車競技が注目されているってことですよね。注目されているということは、良い結果を出さないといけない。応援して下さっているみなさんに対する感謝の気持ちをもって日本選手の皆が頑張っていくだけだと思います。主将に選んで頂いたということは、全日本ろうあ連盟が期待しているということ。選手たちは尻に火をつけてただ駆け抜けていくしかない。


聞き手/いろいろありがとうございました。


(聞き手:強化部/手話通訳:田村梢)


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